点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

『ブラック彼氏』──女性は結婚をするとき、何が気になるのか

 

ブラック彼氏  恋愛と結婚で失敗しない50のポイント

ブラック彼氏 恋愛と結婚で失敗しない50のポイント

 

恋愛本を読むということは、どことなく恥ずかしいような気がしていた。恋愛なんかに必死になってどうするの?とか思っていたからだ。僕は顔が良い方でも、モテる方でもない。完全無欠のインドア非モテみたいな見た目と性格をしている。「モテたいな~」とか言っておきながらモテる努力を一向にしないそこの君。僕と同じだね。意識低い非モテ同盟でも組んでやろうかと思ったりしないでもないが、それはまた別の話。

この本、気まぐれに図書館で借りてきた本なんだけど、買ってもいいかなというくらい為になった気がする。恋愛本、特に女性が女性向けに書いた本というのは、男性に対して媚びていない。こんな男はダメ、ゼッタイ!とボコボコに殴る。

著者の堀井亜生さんはフラクタル法律事務所代表弁護士であり、離婚・男女問題の取扱実績が多い方だ。彼女に舞い込んできた案件から、統計的にあぶり出されたブラック彼氏像を紹介する本であり、ブラック彼氏の見分け方、ブラック彼氏と付き合ってしまったらどうするかという対処までしっかりと書いてある。

本書はブラック企業をもじったブラック彼氏を次のように説明している。

 本書のタイトルである「ブラック彼氏」とは、一見すると高スペックなのに、結婚した後でとんでもない事故物件だったことが発覚してしまう男性を指します。
 たとえば、結婚前は優しかったのに、結婚したらひどいモラハラ夫になってしまったとか、結婚前は羽振りが良かったのに、結婚したらドケチ夫だったなど、結婚前に隠れていたブラック性が結婚後に現れる男性は、案外多いものなのです。

本書ではこうしたブラック彼氏を5つのタイプに分けている。

「隠れモラハラ系」──人間的な器が小さく、独りよがりで、自分の価値観を女性に押し付けるタイプ。

「隠れ浮気系」──かっこよくもなく遊び人にも見えないのに、ためらいもなく浮気するタイプ

「隠れマザコン系」──親から独立してひとり暮らしを始めたり、彼女ができたりして一見自立しているように見えても、母親依存の関係を解消できないタイプ

「隠れドケチ系」──高収入でお金があるのに、コストパフォーマンスを重視してこれを使わないことに命をかけるタイプ

「隠れDV系」──一見して優しそうなのに、結婚後に暴力を振るうタイプ

あなたの彼氏、もしくはあなた自身はどのタイプか?

それぞれのタイプに10個の見分けるポイントを解説しているので、読みやすさは抜群。テンポよく彼氏のあら捜しができる作りになっているので、普段読書しない人も読んでみると良い。ちなみに僕は「ファッションが休日のパパ」「週末になると実家に帰る」「あまり上手ではないけど一応料理ができる」という理由で、「隠れマザコン系」に一番近い結果とあいなりました。うるせえ!男はみんなマザコンじゃい!!ビートたけしも言っていることだ。

男性である僕がこの本を読んでよかったことは何か。それは、恋愛関係から結婚し、相手の良くない部分が見えてくるというのは、よく聞く話だよね~~と一蹴すべきではないということに気がついたことである。

自分が普段している何気ない行動が、実はブラック彼氏の条件にあてはまっていたとしたら……と考えれば、恐ろしい。それを知らずに格好だけ良く恋人関係を続け、結婚した途端に素が出て相手をドン引きさせ、運良く長く夫婦関係を続けられたとしても、子どもを育て終わった40代後半~50代前半になって、三行半を突きつけられることになる可能性が高まることは間違いないのだ。

分かりやすく書かれている分、「それは著者の主観でしょ?」と言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、「そうか、女性は男性のこういうところが嫌だと思いやすいのだな」と素直に受け止めたほうが、読んでいて、多分ダメージも少ないし、きっと為になるんじゃないかな。

『マヤさんの夜更かし』──真夜中の通話は楽しい

 

本作は、怠惰な生活を送る魔女のマヤさん(表紙のキャラクター)と、漫画家志望の女性、豆山(まめやま)によって繰り広げられる、壮絶ゆるゆる深夜音声通話エンターテイメントである。

中野ブロードウェイの中の書店で購入した。試し読み用に吊るされたペーパーブックを読んでみると、なかなかにツボだったのでそのまま衝動買いをしてしまった。

インターネット上だけの友達と交流してきた経験がある僕みたいな人間は、深夜通話特有の、あの雰囲気を追体験できる。このニッチな部分にフォーカスを当てつつ、魔女のマヤさんというファンタジーな存在を備えたキャラクターがいることで、単なるスカイプ会話劇にならず、流れに動きを付けているのがいいなと思った。マヤさんのダメッぷり(ソシャゲ課金廃人、家事できない、おしゃれもイマイチ、魔法を使うと腹痛くなる等)も愛嬌がある。現代社会の悩める女性フリーター代表のような感じで描かれている。魔女なのに。

基本的には夜中の通話模様を描いており、基本的にそれ以外の描写は少ない。ほとんど2人の会話だけだが、かなりテンポが良いのですらすら読める。これだけ色々共有できて話せる相手がいたらな~とか、読んだら思う人も出てくるんだろう。

真夜中の通話の何が魅力的かといえば、もう本当にどうしようもない、どうでもいい話が、最高に面白く思えるところだ。僕も何回かネット、リアル問わず深夜に通話をしたことがあるけれど、中身なんて無くてもいいので、とりあえず頭に思いついた話題をふってみたり、相手が言ったことに対して受け答えをしているだけなんだけど、マジで楽しい。

もちろん親しい人間との会話であることは大前提なんだけどね。

この作品の中の2人を見ていると、ネット上だけの知り合いと音声通話をしているときのことを思い出す。豆山は、マヤさんと実際に会ったことはある。少しの間同じ病室で時間を共有した。だがマヤさんが本当に魔女であることだとか、マヤさんの素性についてはさほど知らない。けれど、いつも通話をしているので、人間性だとか、性格だとか、近況という一部の情報だけ知りすぎている。

こういう人間関係って、ネットに生まれがちじゃないかって思う。

互いのことをさほど知らずとも、仲良く喋ったりすることができる、不思議な間柄の、不思議な時間共有体験は、ネットならではだ。「こんなにウマが合うのに、会ったことすら無い」とか「もっと近くに住んでりゃ、実際にあって遊ぶのに」と思うような人物って、ネットで友達を作ったことがない人からすると不思議、というよりも気味悪いと思うんだけど、あるんですよそういうの。

マヤさんみたいに、人付き合いが少し苦手な人にネットをもたせるとこうなるよなという縮図として捉えるのも面白いかもしれないけれど、そうしたマジメぶった考察を受け付けない圧倒的ユル可愛さ。そうそう、こういうどうでもいい話ができる相手がいるって、それだけで人生結構楽しいよなぁ。漠然とそんなことを思える作品だ。

 

単行本

マヤさんの夜ふかし 1 (ゼノンコミックス)

マヤさんの夜ふかし 1 (ゼノンコミックス)

 
マヤさんの夜ふかし 2 (ゼノンコミックス)

マヤさんの夜ふかし 2 (ゼノンコミックス)

 

 

『哲学用語図鑑』──哲学に興味を持てるかの基準はこの本で

 

哲学用語図鑑

哲学用語図鑑

 

「教養持つべし!」の風潮を感じると、哲学の道を志す人が現れる。僕だ。

なんか良いじゃん哲学。特に西洋哲学。なんか、昔の誰それはこういう事を言ってたしね~とか嫌味なく言うとさ、頭良く見えるじゃん。

あとは、哲学知識を前提とした本が結構ある。哲学知識が豊富な本は読んでいると躓く。読んでいて、いきなり「ヒュームが言ったように」とか言われてもピンと来ない。せっかくその著者の視点を獲得しようと思っても、前提知識に欠損があり、うまく腑に落ちないということは、読書をすればするほど出てくる。

哲学は金儲けにすぐに役に立つ情報ではない。さらにあなたを幸せにする方法論を説いているわけでもない。現世利益を与えてくれるか、定かではない。だから結構ないがしろにされるきらいがある。

哲学書は、私はこのようにして、この事象、この問に対して考えました!ということが書かれてある。歴史と同じで、なるほど昔の人は世界をそういうふうに見ていたのか!とか、ほうほうそういう世の中の味方もあるよな!といった楽しみ方が、学び始めの人たちには適している。すぐに使ってやろうだなんて思わないほうが良い。

そんな暇人向けの学問の入り口に、本書『哲学用語図鑑』は最適だと考える。まずこの平易な解説で、「面白い」と感じないようなら、今すぐに哲学を学ぶということは避けても良いかもしれない。「当たり前のことを疑う。それについて私はこう思う。」という側面を持った分野なので、「いやそれは……当たり前だから別によくね?」と思ってしまうならば、読むだけ損に感じてしまうかもしれない。それを本書の図解と解説を読んでみることで、自分にとって哲学が性に合っているかいないかを測定できる。

哲学というジャンルは面白いことに、「哲学をしたことを文章におこした本」という本物の哲学本よりも、「哲学入門書」の数が圧倒的に多い。それだけ哲学をすることは難しい、人の哲学を理解するのは難しい。それは仕方がない。その人くらいしか、そんなこと考えなかったんだから。その考えを、その人自身が平易な文章で残してくれなかった場合、理解に苦しむ。ヘーゲルとか、ヘーゲルとかね。ヘーゲル苦手。

たまに哲学入門書から読むのではなく、原典から読み進めなさいという哲学攻略法を聞く。なぜなら、飽和状態の哲学入門書の一冊一冊で、捉え方が違う可能性があるからだ。間違った前提から読んでしまっては、原典を曲解しがちになってしまうのだ、という。でもそれってあまり関係ないと思う。いきなり純粋理性批判読んで哲学っておもしれ~という人が現れたら、もう素質ありまくりで、それほど哲学を必要としない僕らのレベルを超え、マジモンの哲学者になったらいいよレベルだと考える。

僕らみたいに、「趣味で読書やってま~~す。読書楽しい~~」とか言っているうちは、自分の興味を持てる範囲のところから読んでいくのがよっぽど楽しい。むしろ一つの考え方からそれだけ色んな人に別々の視点を与えるのってすごくないか?ということで、入門本を読み漁っちゃうのもありなんじゃないか。そうやって入門本を読み漁っていると、絶対にここは皆こういうふうに書いてあるな、ということが分かる。で、ちょこちょこ違うものがでてきたら、原典を読んでみる。そのときに、自分は誰寄りの意見を持ったのかな?という整理の仕方でも全然いいんじゃないかって思うのだけど、どうなんでしょう。

兎にも角にも、もしあなたが、哲学の言葉の意味を手っ取り早く分かりやすい文章で理解したいというのであれば、本書は必ずや役に立つ。有名所を抑えてあるから、考え方や意味さえ覚えてしまえば、哲学知識前提の本を読んだとき、ネットコラム、ブログ記事を読んだときでも、「それわかりまっせ」アピールくらいできるレベルになると思う。

そして哲学とはどういう世界なのかということに少しでも興味があるなら、読んでみてほしい。自分は過去の西洋哲学を面白いと感じ取ることができるか?ということを試すことができる良書だ。

 

哲学入門

哲学入門

 
14歳からの哲学 考えるための教科書

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哲学入門 (ちくま学芸文庫)

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