点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

寝不足日記20190221

 仕事が終わって帰宅すると日付が変わって30分ほど経過していた。スーツをハンガーにかけるのも億劫で椅子に脱ぎ捨てて、風呂にも入らず部屋着に着替えて、ぼーっとドラマを見る。あぐらをかいた足から臭う腐ったゴミのような臭いが、自分のストレスの大きさを表しているようで、なんだか虚しくなった。

 見ていたドラマもいけない。画面の中の田村正和演じる古畑任三郎からはいい匂いがしそうなのに、彼の推定年齢である55歳よりも約25年ほど若い自分からは、恐ろしくダメな臭いがしている。焦る。古畑からはいい匂いがするというのは僕の妄想であるからして、その知覚コントラストは不必要であると、心優しい読者の方々はお思いになるだろう。だが、第1シーズンで犯人役として登場した小堺一機は、共演時の田村正和はいい匂いであったという証言を残している。人生の第2シーズンが見え始めている僕はお世辞にも良い匂いがしそうな見た目とはいえず、むしろくさそうだ。そして実際にくさい。完敗だ。いや、比べる対象が間違ってんのわかってるんだけどさ。

 こういうブログを書いているやつというのは、色白でやせ細っていて、体臭なんてございませんくらいの者でなくてはならない。貧乏で、本を好んで読み、主たる趣味なんてそれくらいしかございませんというような人間は、もう少しひ弱な感じにならんとダメではないか。デブではいけないのではないか。謎の悲しいルールを自分一人で作って悶ている。一生に一度でいいからガリガリになりたい。激しい運動をした途端に肺に穴があいてしまうようなガリガリになりたい。

 巷では筋トレが流行り、自己実現の技法として筋トレがもてはやされている。全ての悩みは筋トレで解決できると豪語するインフルエンサーなども登場し、感化されたストレスフリーなマッスルモンスターが、各地方で出現している。悩みのない力のあるバカが一番怖い。頭が良いともっと怖い。みんな筋トレするな。

 古畑任三郎で特に好きな話が、津川雅彦が犯人役として出演する回。古畑任三郎を全く知らない人が見るのにはあまり向いていない作品だけど、ぜひ見てみてほしい。なぜかって古畑がやけにいいことを言う。猛烈ネタバレだけど。古畑任三郎を見てこの種類の感動を味わうとは思わなかった。寝不足のせいか。

「たとえ、たとえですねぇ、明日死ぬとしても……やりなおしちゃいけないなんて誰が決めたんですか」

 古畑のセリフとは思えない。普段飄々としている人からこういう類のことを言われると、いや厳密にはこれ言われるのは登場人物なんだけど、ああぁ~ん古畑ぁ~ありがとう~俺やりなおすよぉ~とかなりそうになる。

色白でやせ細ったガリガリになって、人生やりなおすんや。

まずは風呂に入ろ。

 

古畑任三郎―殺人事件ファイル

古畑任三郎―殺人事件ファイル