点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

宗教の奥義は言語束縛であるー『宗教の秘密』

宗教の秘密

宗教の秘密

 

読前レビューやったんだから、読後レビューもやらなきゃね笑

 

タイトルとは裏腹に、経済批判の書であったと思います。

てっきり宗教批判の書であったと思ったのですが、少し違いました。そういう意味で意表を突かれました。

 

宗教、あるいはそれに分類できるような信念体系の本質は「言語束縛」であり、現代人はブレトン・ウッズ体制の終焉、いわゆる第2のニクソン・ショック以降、無尽蔵にバンカー(銀行家)がマネーサプライを調整できる世界になってしまったおかげで、そのような層の人間から、「お金教」という言語束縛を受けているのだ!というのが著者の言いたいことのはず。

で、この言語束縛を手っ取り早く説明するのに、宗教使えるじゃないか!ということで、キリスト教の成り立ちやら仏陀の主張分析、マルクスの資本主義批判なんかを取り上げながら、現代経済批判をするためのツールとして、宗教の裏表で働くパワーを解説しています。

著者の主張では、イエスにしろブッダにしろ、どうして現世まで影響力を及ぼしているのかというと、当時信じられてきたユダヤ教あるいはバラモン教の内部にあった、「既存のア・プリオリ性の否定」をしたのち、「ア・プリオリ性という言語束縛からの解放と、それを上回る新たなプリンシプルの提示」を行い、未だそれを乗り越える宗教が誕生していないからであると説きます。

いや、実際は「お金教」が最強かもよ?ということを言いたいわけですけどね。

 

この指摘はとても面白く、少なくとも僕の記憶のインデックスから「それは違うんじゃないの」と言える箇所もなく。

分析面では、わかりやすく平易に宗教の本質についての持論、仮説を語り、現在の経済活動、資本主義も一種の宗教的なレベルでの言語束縛を我々に与えており、それをまず意識しないことには始まらない、という視点は、読んでいてワクワクします。

 

最後にぶっ飛んだ章があって、「苫米地さんそういうところだぞ……」って感じなのですが、最終章は「1週間で世界宗教をつくる方法」というテーマで語っています。

この部分に関しては、論理的に宗教を分析しすぎているきらいがある気がします。

人間の情動や社会の機運によっては、1週間で教祖を育てて宗教団体を形あるものにするってのは難しいんじゃないのかという気がしないでもないんですがね。

しかも自分が教祖になるのではなくあくまでもブレーンになるプランを解説しているのが恐ろしい。

 

まず非暗示性の高い人物を、変性意識状態にしやすい環境から探し出して、教祖に任命するわけです。選んだ人の無意識に、「あなたは世界を救うための教祖である」という情報を書き込み、本気で頭おかしくさせて、神秘体験なんかを集団で体感させたりすることでラポール(信頼関係)を築き、寄付金を集めてこい!と指示すると動くぞ!ってそれあんた!洗脳やんか!!!

 

お金教 VS 苫米地教の戦いの火蓋がこの書でもって切って落とされてからはや7年。

そろそろ苫米地さんは新興宗教団体を創り出すころかな?とか思ってるんですけど、どうなんでしょうか。

この人自身、オウム真理教の信者を脱洗脳させたりっていう話が本当なら、間近で「被洗脳者」を見ているし、洗脳の引き起こし方を分かっているので、宗教というカテゴリーの持つ力を目の当たりに体験できている人かなと。なので、そういうことを仕掛けようと思ったらできちゃうぜ、的な中2のアレを感じつつ、ふーんほーんと軽く読むには面白い本だったんじゃないかとは思います。

憶測や推測もちょっとあったかなとも思います。仕方ないんですけどね。資料がないですから。あくまでも著者の仮説に則れば、整合性は取れているかなと。

 

この手の本を書く自己啓発本の著者ってあまり参考文献書いてくれません。どうせ見ないだろって理屈なんでしょうけど、僕は読むので付けて欲しいです。いっつも思う。

Kindle Unlimitedに登録している人は、10冊ストックの中で読むことができますから、話半分に宗教に関する新しい見方を読んでみたい人にはオススメかなと思います。

お粗末様。