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『1億3000万人のためのeスポーツ入門』──一過性のブームに終わるのか

1億3000万人のためのeスポーツ入門

1億3000万人のためのeスポーツ入門

 

フィギュアスケートができなくても観戦するのはとても好きである、という人が、この国には多いと思う。

羽生結弦選手などが出る番組は録画をしなければと躍起になる奥様方は数しれず。Twitterでは「推し」という言葉によって、ファンはその魅力を語るためのアクティブな態度を獲得し、推し選手が出場するスポーツ番組などが放送された日は、トレンドにその番組名のハッシュタグや、選手の名前がランクインする時代である。

スポーツは、自分が全くできない競技であっても、観戦という楽しみ方が存在する。僕も最近、『THE KING OF FIGHTERS 2002UM』というスポーツを観戦している。え、知らない?激アツですよ。僕は全くできないのだけれど、観てる分にはとてもおもしろい。You Tubeでは試合の配信もしているよ。2002年頃から始まった新しいスポーツなんですけど……。

茶番はさておき、テレビゲーム、ビデオゲームはスポーツであるという認識は、今や世界規模である……ということを敢えて言葉にするのも野暮になった。それほどまでに、「eスポーツ」という存在は日本で知れ渡っただろう。しかし、最近てんで盛り上がっていないように感じるのは、僕だけか。

全くeスポーツを知らない人に向けて言うと、定義は人それぞれだけど、「ゲームをスポーツのように競技化するムーブメント」のことである、と思う。

海外では日本よりも先に数十億円の金が動く一大産業になっている。日本でも、これは儲かりそうだぞ!と興味本位で覗いた人たちが大勢いた。けれど、なんやかんや、最近めっきり勢いが無くなってきている気がする。どうしてだろうと思い、eスポーツ関係の書籍を新しめの情報が記載されているもので探していたところ、本書『1億3000万人のためのeスポーツ入門』図書館で発見した。

本書はゼロからeスポーツの概観を知るのにうってつけ。ムーブメントの大まかな歴史などの基礎知識、eスポーツ選手の最前線情報、eスポーツの法務やマーケティング、eスポーツ今後の展望に分けて理解できる。

eスポーツについてはそれなりに知ってるけど?という人でも、法務の部分を面倒臭がってスルーしてしまっていたりする場合は、本書が役に立つ。

複数著者が苦手という人もいるかもしれないが、読んでいて飽きが来ないというポジティブな側面があるし、それぞれのトピックを専門的に扱っている人物が書いているので、信ぴょう性は高いのではないか。

僕の疑問、「eスポーツ最近盛り上がってんの?」に関して。

これは僕が思っていたよりも、盛り上がっているらしい。株式会社Gzブレインの調査によれば、日本のeスポーツ市場は2017年3億7000万円から、2018年48億3100万に急成長している。これを受けてか、2018年にはコンピュータエンターテイメント協会主導で、日本eスポーツ協会が発足。観戦人口は382.6万人(2018年時点)であり、大中小さまざまなイベントが日夜開催されている。

それにしてもメディアでの露出が少ない。僕がスルーしているだけかもしれないけれど、新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアでeスポーツの記事をお目にかかることは稀ではないか。何故か。

eスポーツで競技になるゲームには、暴力表現が多く含まれているものが多い。日本のマスメディア、特にテレビに取り上げられるには、表現の変更や用語の残虐性などを取り除くなどの配慮が必要らしい。そして普通のスポーツとは違い、ゲームは著作物であるため、扱いが非常に面倒くさい。日本でeスポーツに関わったり、マネタイズしたりすることには、多くの障壁がある。

eスポーツ儲かりそうだな、と軽い気持ちで関わりを持とうとした人、持ってしまった人に向けて、本書はいい薬になるだろう。この本をきっかけとして、実際に自分がどのようにeスポーツと向き合うのかということを考えることができる。

また、観戦を主に楽しんでいる我々にとっても、法務やマーケティングなどの裏方的知識を薄っすら仕入れておくことは、ムーブメントの支援や、eスポーツ振興のアクションを起こす際に有益であると思う。

現段階では、法律面での障壁と、コミュニティの閉鎖性によって、eスポーツは中途半端な盛り上がり方をしてしまっており、このままだと一過性のブームで終わってしまいそうであるということだ。

タピオカの終焉とeスポーツの終焉、どちらが先に来るか。

 

タピオカだろうな。そうであってほしい。