魅力的な脳科学や心理学を疑うべき理由
昨日紹介した『心理学の7つの大罪』には、一般読者が心理学(認知心理学、脳神経科学、機能脳科学、社会心理学、発達心理学など、ありとあらゆる心理学において)のコンテンツに触れる際に気をつけて置くべきことが書いてありました。
ジャーナリスト、一般市民へ
1 ジャーナリストと読者へ。最新の心理科学を報じるニュースを書いたり読んだりするときには、批判的な心構えを持つこと。論文は独立した形、もしくは著者自身によって再現されてきたか?サンプル・サイズは導かれた結論を十分正当化できるほどの大きさだったか?研究バイアスの源を防止するために、どのような手段が講じられたか?尋常ならざる主張には尋常ならざるエビデンスが必要だということを忘れないように。
きちんとした再現性が取れるのか?ということは、科学の看板を背負っているなら守らねばならぬというルールであります。
そういうことを言うと、
「芸術や文芸はどうなのだ。文学というのは学問ではないのか?」
ということを言い出す人もでてくるでしょう。
芸術は最初から非認知的な情報で勝負をしていますから関係がありません。ここで批判されている心理学は「統計データ」という定数的なデータを根拠にしています。心理学は物理学や科学と同様に、厳密な数学の方法を使って根拠に妥当性をもたせるぜ!勝負するぜ!と決めた瞬間、この部分でズルをすることができなくなりました。
でも、ずるをしていしました!
というのうが、『心理学の7つの大罪』で語られている内容なんですね。
実は、こうした情報は、「再現性の危機」というキーワードで、グーグル検索をするとたくさんでてきます。Wikipediaもあるので、興味がある人は覗いてみてもいいかもしれません。
数字というのは結構厄介な存在です。読書家で有名な立花隆さんをはじめ多くの言論人が、『ゲーム脳の恐怖』という悪名高い疑似科学本の数字トリックにまんまと騙され、書評などで「ゲーム脳こええ~」という論旨で本書をオススメ!みたいに紹介をしていたことがありました。
ということは、お勉強していたり、本を読んでいたりしても、統計解析の専門家でもない限り、ここらへんのデータって見破ることは難しいということでして。
一般人の我々の感覚としては、これ数字で出ているけど、本当に正しいの?都合良くない?と一旦疑ってみることで、ホイホイと魅力的な脳科学や心理学に追随しないようにするか、統計をガチで勉強するかのどちらかくらいしか対策が無さそうです。トホホ。
我々はつい、自分たちの都合の良いものを見ようとしてしまうクセがありますから、そういったことに目をむけるキッカケになりましたなあと。2日続けてオススメしちゃったわけです。その他にも、データから仮説を立てるという不正(HARK行為)や、いい加減な方法で妥当性を高める習慣(論文引用率)などについても言及していますんで、興味あったら読んでみてほしいっすね。
心理学の7つの大罪――真の科学であるために私たちがすべきこと
- 作者: クリス・チェインバーズ,大塚紳一郎
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2019/04/02
- メディア: 単行本
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