点の記録

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「影響力」を考えるときに使える本3冊

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

 

自分の人生に「影響力」なんて必要かしらと思っているならば、 この本を読んでおいて損はありません。この本で書かれている「影響力」とは、いわゆる心理学で「承諾誘導」と呼ばれるテクニックについてです。

社会心理学者のロバート・チャルディーニは、承諾を誘導する時には、「返報性」「一貫性」「社会的証明」「好意」「権威性」「希少性」の6つが非常に良く影響しているということを、自身の研究とレビュー論文調査からモデル化し、それを一般向けの書籍にしたのがこの本です。

セールスマンや銀行員など、相手の承諾を取ってなんぼという人にはコレほどいい本は無いでしょう。

少なくとも、個人的な成功体験を寄せ集めした営業本や、心理学では、脳科学では~とネットで得られる知識の寄せ集めでしかない本を何冊も買うのではなく、この一冊で終了しておくのがベストかと思われます。

別に影響力なんてそんな必要無いんですけど?

という人も、「相手がどういうテクニックを使っているか」「この社会現象はどのような心理が働いているか」という分析、防御策を知るのに非常に良いものです。

「仕掛けられている!」ということに気がつけば、用心することができます。チャルディーニも本書の中で、自身の研究結果を実体験で使ったところ、セールスマンを撃退できたというエピソードを書いています。

記事を書いている現在、Amazonではあと1冊しかないみたいなので、興味ある人は今のうちに(希少性)

『黒い心理学』系の本が流行っている今日このごろですが、そんなものを読むより、濃い内容が書かれている本書を進めます。

『影響力の武器』は大著であり、中々読むのが大変!という声も多いのですが、こちらは新書サイズでマインド・コントロールの奥義を知ることができます。

という書き方をすると、まるで洗脳を推奨する本なのか?と思われるかもしれませんが、どちらかと言うとマインド・コントロールに対する護身術を教えてくれる本です。

個人的な体験なのですが、新卒で入った中小ブラック企業でやめたいやめたいと苦しんでいたときに、本屋でこの本を発見して、「見事に全部仕掛けられている!!!」となり、堂々と辞めることができるきっかけになった本でもあります。(もちろん、周囲の人達、とくに支えてくれた彼女さんの力無しには辞めることはできませんでした)

自分が今、マインド・コントロールを仕掛けられていないか?ということを知るのに、一番手っ取り早い本ではないかと思われます。ブラック企業、DV、いじめなどに悩んでいる方の処方箋になりますように。

洗脳原論

洗脳原論

 

苫米地英人氏と聞くと「バラいろダンディ」という番組に出てくる、胡散臭いお金持ちのおじさんで、自己啓発本ばっかり出している人というイメージがあります。

そのイメージで間違いではありませんが、彼の処女作である『洗脳言論』に関しては、氏が傾倒する自己啓発カルチャーのもと書かれたものとは一線を画する本で、一読の価値はあるかと。

洗脳とは何か。

洗脳とは、われわれの神経レベルでの情報処理・信号処理の段階に、何らかの介入的な操作を加えることによって、その人の思考、行動、感情を、思うままに制御しようとすることである。

オウム真理教に洗脳されてしまった人たちを、彼の研究分野であった認知科学をつかってデプログラミング(脱洗脳)をする過程を交えながら、人間の意識、脳がどのようなプロセスで洗脳されるのか、ということが書かれています。

ただ、認知科学で解明されている脳構造には限りがあります。

そこで著者は、人間の恒常性維持機能(生体が生命維持をしようと細胞レベルで調整する働き)が、脳の抽象的な情報処理にまで及ぶという「ホメオスタシス仮説」をベースに論を進めています。

まあこの本に限らず、あらゆる化学は仮説であって、その仮説どおりに実験した結果、しっかり再現できるとされたものから「確からしい」とされるので、こういう心理学読み物は話半分に読むのがベストではあります。

本書は、こうしたマインド・コントロール、洗脳、カルト宗教の神秘体験を、脳の神経ネットワークのレベルと、ホメオスタシス仮説という抽象的な概念レベルで解説し、それらは変性意識状態の生成で意図的に引き起こせるので、第三者の利益で洗脳されることのないよう、用心すべしという内容です。

個人的には、彼が現在やっている自己啓発セミナーを見てみると、まあ見事にこの方法を使っているんじゃないかという気がしてならないのは、ここだけの話……。