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『LIFE SHIFT:100年時代の人生戦略』──無計画人は苦しんで死ぬ

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

流行の本を流行しているときに読みたくない人って多いと思う。僕はその一人だ。

本書はビジネス本界隈ではかなり話題の書になっていた。発売当初は興味があったけれど、「絶対読んでやるものか」という謎の決意を固めてしまい、『サピエンス全史』と共に、「後で読むベストセラー書籍リスト」入りしてしまった本書である。

本書を一言で要約すると、「これからまじで寿命延びるので、既存のモデルではなく、時代にあった計画をしないと幸せに生活できないよ」ということだ。

まず本書の大前提は、「平均寿命が100年になる」というもので、その根拠としては医療の発展である。ここを受け入れられなければ、本書は読めない。刹那的な生き方に魅力を感じる快楽主義者は、万が一年寄りになったときに地獄を見ると予言する。

外れることを期待したい。

なぜかと言うと、僕は計画を実行するのがとても苦手な人間だからだ。夏休みの宿題は計画通りに終わった試しがないし、仕事、生活、お金に関する計画が、思い通りにいったことはほぼゼロで、特にお金に関しては、発達障害なのではないかと疑うほどに、書籍代やらお菓子代に使ってしまう。

本書の提言は、計画力と、それを実行できるという自己効力感やスキル、経験を豊富に持っていないと実現が難しいということが個人的な感想だ。

本書によると、20世紀の人生モデルは、「教育」→「仕事」→「引退」という3つのステージで考えられ、それぞれでどのように行動するかという計画をすれば、幸福に生き残ることができたという。しかし引退の時期が今までと同じ時期、かつ寿命が増えるとなると、話は変わってくる。引退後の資金が足りなくなるのだ。つまり、年寄になっても働かざるを得なくなる。

「年金に頼らず2000万円貯めろ」という発言が出てくる政治体勢であるから、ここを本気で考えなければ、悠々自適な老後を送れないばかりか、家族に迷惑をかけたりすることになりかねない。特に、お金の面で。長寿になるということは、その分金がいるということと同義なのだ。

今までのロールモデルでは、引退の時期を遅くするか、引退後、倹約生活を送るかのどちらかしか選択肢が無い。そこで本書では、「人生のマルチステージ化」を提唱する。

例えば、生涯に二つ、もしくは三つのキャリアをもつようになる。まず、金銭面を最も重視して長時間労働をおこない、次は、過程とのバランスを優先させたり、社会への貢献を軸にして生活を組み立てたりする。

(中略)

 マルチステージの人生が普通になれば、私達は人生で多くの移行を経験するようになる。3ステージの人生では、大きな移行は2回だけだ。教育から仕事へ、そして仕事から引退への2回である。しかし、人生のステージが増えれば、移行の機会も増える。問題は、ほとんどの人が生涯で何度も移行を遂げるための能力とスキルを持っていないことだ。マルチステージ化する長い人生の恩恵を最大化するためには、上手に移行を重ねることが避けて通れない。

ここから読み解ける本書のメッセージは、人生を豊かに暮らすためには、人生の区分(ステージ)を複数持ち、その移行をスムーズにするための知識とキャリア、スキル、メンタルを持つようにすることが必要だ、ということである。言うは易く行うは難し。どうすればいいんだか。

当たり前だが、「資産」を増やすしかない。

本書ではマルチステージを生き延びるために必要な資産の中で、「無形の資産」の解説に、多く紙幅を割いている。長寿化との関係を念頭に起き、無形資産を「生産性資産」「活力資産」「変身資産」に分けている。

「生産性資産」は人間が仕事で生産性を高めて成功するのに必要な資産のことで、主に知識とスキルが構成要素である。できる人間か否かである。

「活力資産」とは肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。本書では、身体的健康、友人関係やパートナーとの良好な人間関係によって支えられる精神的健全状態が、良い人生を送る上で必要であると説く。

「変身資産」とはマルチステージな人生を送る上で必要な資産のことで、新しいことに対して挑戦する態度や、ステージを移行するときに利用できる人的ネットワークのことだ。

これらの資産をいかにして築き上げるか、増やしていくかを思案するというのが、今後の人生にとって重要になると予言するのだ。目先の利益だけで仕事や人間関係を断ち切ったり、糖質過多の食生活を続けたり、運動不足であったり、勉強をしないまま生活をしていると、あっという間に不幸な人生になりそうだ。

まさしく本書のダメパターンをうつ病ニート状態として暮らしている僕にとっては、気の重くなる本ではあったが、長生きしたい!と心から願う人にとっては、当面の間のバイブルになるだろう、という気がする。

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