点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

『独学大全』を買ったら、英語と数学を中学からやり直す事になった

やべぇ本買っちまった

実際に『独学大全』を、本当にほんのちょっと実践してみた記録。

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

  • 作者:読書猿
  • 発売日: 2020/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

『独学大全』というやべぇ本を買ってしまった。一言で言うと、勉強・学習について、目標の立て方からモチベーション維持に始まり、基礎的な技法から記憶術や文献整理、査読の技法に至るまでを全部一冊にまとめたら約800頁になったよっていう本。

一冊あれば、その他の「勉強のやり方本」は不要と言い切っても良い

この本を手に入れたがために、僕は学び直しに本腰を入れることになった。

猛烈に学び直しの動機が高まったのは、"第4部 独学の「土台」を作ろう"を読んだから。基礎学力不足を実感していた僕には、ガンガンに刺さる内容だった。

この部では、独学に最重要な基礎科目(国語・英語・数学)について、それを身につけるための意義、心づもり、著者によるルートマップが語られる。その後、ショートストーリーの形式で、実際に本書で紹介されている技法を用いながら、独学進捗のifストーリーを描き、具体的な基礎学力トレーニングのモデルケースを提示してくれている。

 3つの物語ではそれぞれ国語、外国語、数学について独学する事例を取り上げている。
 これら3つを選んだのは、これから独学を広げていくにあたって、基礎となり前提ともなるものであるからだ。生まれたから長年慣れ親しんでいる第一言語を満足に扱えないようでは、自分一人で読み書きを通じて独学することは難しい。そして外国語と数学を学ぶことは、学術情報をはじめとして、利用可能な学習資源の範囲を拡大する。(P.666)

この説明を読んで、ざっと一通り第4部を読み終えた僕は、すぐさま第1部に戻り、「学びの動機づけマップ」と「可能の階梯」、「学習ルートマップ」を作成した。どんな感じになったかを、以下に書いておく。ネタバレ注意。

学びの動機づけマップ

「学びの動機づけマップ」だけは、一番最初に紹介されているだけあって、絶対にやっておいた方がいい。初っ端から、結構疲れる作業だけれど、やればやるほど強固な動機づけ、というか、自分が学ぶ意義や意味について、迷うことがなくなる価値観を掘り起こすことができる。

ところで、僕の独学願望は根源は、ミュージシャン平沢進さんとの出会いだったらしい。

またあなたか!!!

読書という行為が、今くらいのレベルで好きになったのも、平沢さんが影響を受けたSF作品を読みたいというのがきっかけだった。PCで音楽を作るようになってから、自分だけの作品を作りたいと考えた時、独特な世界観や、一筋縄では行かない作風の創作には、多様な価値観の吸収、つまり読書が必要であると考えた。

しかしこれは、本当に素朴に、「そういえば考えたことがあったな~~」というレベルの、埋もれた記憶だった。しかし「学びの動機づけマップ」によって掘り起こされたこの記憶は、ポジティブに学習動機を整理してくれた。

動機は様々出てきたが、整理した結果、一文に集約できそうだった。僕の学習の当面の動機は、「生活と創作の充実」だと決まった。

精神の病と共存あるいは格闘するための生活・処世術の獲得と、忘れかけていた趣味への情熱を取り戻し、アウトプットの質を向上するための行為が、僕にとっての学習である。

一本芯が出来上がると、方向性が見えてくるのと同時に、足りないものを補いたいという欲求も強まる。独学の土台は、やはり必要だと思うようになる。

基礎学力の学び直しに選んだのは、英語と数学だ。

理由は、苦手科目かつ、必要性があったからだ。

英語は、趣味のDTMで海外サイトから音源を買ったりダウンロードしたりするときに使う。数学は、社会科学系の書籍に突如現れる数式に対応したいと思うことが何度もあった。この素朴な必要性をとっかかりにして、どうせならまるっと学びなおしてしまおうという魂胆だ。コアな動機である「生活と創作の充実」にも、ダイレクトに関係するので、設定は間違いではないはず。

国語は古い小説を読みたくなったり、どうにも文章能力が上がらなくなったと感じた時に学習する……と思う。苦手科目を同時に退治しようとするところで、無理をしてはいけないとも思うから。

可能の階梯

学習のスタート地点を決める方法も、本書には用意されている。「可能の階梯」は、現段階で自分の知識がどの程度あるのかを、階段型の図を書いて整理し、不必要な学び戻しを防ぎ、独学特有の「どこから始めたらええねん」問題を解決する。

これを決めるのに、Wikipediaが役に立った。

数学 (教科) - Wikipedia

英語 (教科) - Wikipedia

中学から高校までのシラバスがまとまっている資料で一番最初に出てきたのがたまたまWikiだったのでこれを使ったのだけど、もしかしたら他に見やすいサイトがあるかもしれないので、各自探してみてほしい。

で、ヤバいことに、高校の知識はまるで忘れているし、中学の分野の言葉も、後半になると、パッと見て「ああ~!あれね~~!」とか言えそうもない。本当に僕の知識は日本語の人文系に偏っていたのだ、ということが知れてよかった。きつい。現実がきつい。

「可能の階梯」は、そうした怪しいレベルが出てくる2段階ほど下から学び直すと良いということが書いてあったので、検討した結果、どうやら僕は、それが中学1年生であるらしい。

恥じらいを捨て、そこから始めることにした。

学習ルートマップ

「学習ルートマップ」は現在地と目標をつなぐ工程を具体的に描く作業だ。複数個のルートを想定することで、もし手段1で潰れても、手段2を想定しておくことで、挫折をカバーする仕組みを作ってしまおうというものだ。

僕の当面の目標は、高校生までの英語と数学をマスターすることだ。しかしこれでは具体性に欠けるので、実際の教材を完了させることを目標に置く。

ただ僕は先程も申したとおり、いろいろあって万年金欠であるので、できるだけお金は使いたくない。なので最低限の出費でどうにか多くのリターンを得てやろうという意地汚さが根底にあるとおもって読み進めてほしい。

英語

英語を無料で体系的に学べるサイトは数あれど、肌にあうものが無かったので、教材を買ってしまうことにした。一通りの英文法を学び直すために『一億人の英文法』、中学レベルからやり直すための『速読速聴・英単語 Bacik 2400 Ver.3』を用意した。

文法はからっきしなので、かなり時間がかかると思う。勉強法は本書の「英語(外国語)独学の骨法」を参考にする。昨日は4時間ほどかじりついても、さほどできなかった。相当忘れている。

英単語の方は中学~高校1年レベルだと、これまで生きているうちに既に覚えた単語もかなり多いのだけど、抜け落ちている単語もあった。

単語にしろ文法にしろ、厳しい戦いを強いられることになりそうだ。過去の自分を呪っても仕方がないので、できることからやっていこうと思う。

目標は高校卒業レベルなので、単語がこれでは足りない。なので、「一通り覚えたら『Core 1900』を購入」したり、本書でも書かれていた、「子ども向け辞書を購入」したりするというルートマップを作った。

ところで、英語学習法は流派によって、様々なルートマップがあると思う。お前の学習方法は間違えている!とか言いたい人もいるかもしれない。でも、僕は独学なので、好きに学習させてくれ。

また、息抜きやモチベーション維持の為に、You Tubeの英会話系の人たちを観るのもありかもしれない。挫折の際のルートは、動画にしておこう。

数学

数学は「数学独学の骨法」によると、分かる系書籍よりも、解ける系書籍で、演習を繰り返したほうが良いと書いてあった。これは読書猿ブログでも書かれていたので、以前解ける系の問題集を用意したことがある。『小・中・高の計算がまるごとできる』を、中学の範囲から、とりあえずやってみる。分かる部分は解いて、わからない部分は「筆写」の要領で写経するつもりだ。

小・中・高の計算がまるごとできる

小・中・高の計算がまるごとできる

 

あとは、前述のとおり金が無いので、本書P.194のコラム「金のない独学者に何が出来るか」を参考にして、Web上の数学教材を使って、上の書籍で賄えなかった所を集中的に行うことにした。使うことにしたサイトはこちら。この記事を書くまでに、中学1年生の部分まで終えた。

中学校数学・学習サイト

高校数学の美しい物語 | 定期試験から数学オリンピックまで800記事

「数学独学の骨法」には、分かる系の書籍での息継ぎも必要であると書いてあったので、前から持っていた遠山啓『数学入門(上・下)』(岩波新書)や、瀬山士郎『読む数学記号』(角川ソフィア文庫)を読んで、これを息継ぎとしよう。

数学入門〈上〉 (岩波新書)

数学入門〈上〉 (岩波新書)

  • 作者:遠山 啓
  • 発売日: 1959/11/17
  • メディア: 新書
 
数学入門〈下〉 (岩波新書 青版 396)

数学入門〈下〉 (岩波新書 青版 396)

  • 作者:遠山 啓
  • 発売日: 1960/10/20
  • メディア: 新書
 
読む数学記号 (角川ソフィア文庫)

読む数学記号 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:瀬山 士郎
  • 発売日: 2017/11/25
  • メディア: 文庫
 

分かる系の本ならたくさん持っているのに、解ける系が全然無いことに気がつく。真逆のステップを踏んでいた。次の解ける系問題集を準備するために、少ない小遣いをどこに配分しようか悩み中。

数学初心者に優しい問題集があったら教えて下さい。

いつか成果を形にできる試験とか受けようとも思う。ブログでお知らせできたらいいな。

挫折せずに続くのか?

だいたいこういう記事を書くと、書いただけで満足して、実際の勉強がはかどらないという、とてつもなくダサい結末を迎えることになる。僕はそういうことを、数学で何回かやらかした。繰り返しの挫折は、めちゃくちゃ僕の自尊心を傷つけることになったのだけど、本書を読んで、ある程度価値観が変わった。

『独学大全』のすげぇところ。それは「挫折」や「独学の中断」を認めているところだと思う。全肯定するわけではないが、受け入れ、想定し、対策するという視点を、しっかり読者の僕らに教えてくれる。大体の学習本というのは「継続は力なり」で終了だ。与えられている課題をこなせないなら、諦めろと書いてある参考書などもある。

「継続は力なり」というのは学習という営みにおいては、ほぼ真理だ。もちろん本書でも継続することの重要性は繰り返される。しかし本書は、もし挫折してしまったとしても、挫折者を再び独学のレールに乗せてくれる。

本書のこうした挫折者への配慮は、巻末の「独学困りごと索引」という大発明に、如実に現れている。これは心理学で言うところのコーピングリストのようなものだ。独学最中に感じるであろう、あらゆるストレスに対処できそうな箇所へ誘う索引で、今後の学習本のスタンダードになりそうな予感さえしてくる。

挫折者から独学者へ

この本には2人のキャラクターが出てくる。「親父さん」と「無知くん」だ。各章の最初には、彼らのクスっとくるショートストーリーがついている。漫才台本を見ているかのような心持ちで読んでいると、自然に独学へのモチベーションも上がる、すごい文章だと思う。

親父さんは名言のバーゲンセール状態だ。本書は約3,000円だが、親父さんと無知くんの漫才だけでお釣りが来る。この部分には勇気をもらった。

 多くの独学は挫折する。だが安心しろ、独学が途絶えても人生まで終わるわけじゃない。独学は自分の意志一つで始められる。何度挫折しても、やりたきゃまた始めればいいだけの話だ。(P.657)

学ぶことから逃れられない人間という生き物に生まれたならば、挫折をしようが、少しずつ、世界を広げて生きていく態度を見に付けたいと思う。そういう意味では多くの人は独学者だが、意図的に、自分で選んで世界を広げたいと思う。

 

長々と書いたが、結局この本はどんな本なのか。序文に書いてあるこれを引用する。

 この本はたしかにあまり賢くなく、すぐに飽きるしあきらめてしまう人たちのために書かれた。
 独学の凡人である私には、これが精一杯である。
 しかし独学の達人が書いた書物よりもきっと、繰り返し挫折し、しかしあきらめきれず、また学ぶことを再開したような、独学の凡人であるあなたの役に立つだろう。(P.32)

『独学大全』は、挫折を味わったすべての人間が読むべき書籍だ。何度でも僕らは、挫折者から独学者になれる。勉強に限った話ではない。本書の技術は、スポーツトレーニングや仕事にも応用ができるものがたくさんある。

何度でも立ち上がって良い。このことを、精神論レベルではなく、技術を交えて教えてくれる本は、かなり少ない。

やばい本だ。あって困るものではないので興味があったら手元に置いておくことを勧めたい。

 

<読書猿さんの著作>

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

  • 作者:読書猿
  • 発売日: 2020/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
アイデア大全

アイデア大全

 
問題解決大全

問題解決大全

 

特に『問題解決大全』は、うつ病によって呼び寄せられる様々な「不便なこと」に対抗する手段として、かなり使っています。感謝しかない。