点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

ファンタジーの中のリアリティ―ダンジョン飯(2015年)

今更感あるが超オススメしたい漫画

 散々話題になった後で購入した漫画がある。九井諒子著「ダンジョン飯」である。
 どういう漫画かと言えば「古典的ファンタジーに登場する魔物を食材に、実際に存在する調理方法で料理する冒険グルメ漫画」である。

あらすじ

 冒険者ライオスのギルドはダンジョンの奥深くで強敵のドラゴンに襲われ、空腹が原因で全滅しかける。ライオスの妹である僧侶ファリンはドラゴンに襲われながらも、仲間を逃がすためにワープ呪文を唱えるが、すでにドラゴンの腹の中。ファリン以外のギルドメンバーはダンジョンから脱出するが、装備品以外の所持金とアイテムを全て失い、金銭面的な理由からパーティからも離脱者が。
 残されたライオス、エルフの魔法使いマルシル、ハーフフットの鍵開け師チルチャックは、ドラゴンに囚われたファリンを救出するため再度ダンジョンへ。しかし金銭面での理由から、食料は全て現地調達、すなわち魔物を調理しながらダンジョンを攻略することに。道中出会った魔物調理のプロ、ドワーフセンシにガイドされながら、襲い来る魔物を倒し、調理し、食しながらドラゴンを目指していく。

登場人物のリアリティー

 舞台こそ中世ヨーロッパの文化を下地にしたダンジョン攻略系のTRPG、若しくはテレビゲームでいうところのウィザードリィのような世界観ではあるものの、そこに登場する人物は作品世界に矛盾しないリアルな行動や言動をする。ある意味では今までのファンタジーの常識からすると外れているのかもしれないが、「そうか、ファンタジーの世界だったらこういう考え方するかもな」という新しい気付きの連発である。
 実際にある調理方法を使って魔物を調理するシーンなどがあるのも相まって、ファンタジー漫画に今まで無かった種類の説得力が備わっている。
 そして、このリアリティーは単にリアルなだけではなく、黒い。ユーモアの殆どが黒さを帯びており、ダンジョンの厳しさと同時にそこに挑む人間の価値観を反映している。何より面白い。自分のツボであった。

どういう人にオススメか

 ファンタジーなんて所詮空想のお話だし、グルメ漫画ぽくったって結局現実世界で調理できないんでしょって思っている人こそ読んで欲しい。
 少年漫画的なノリや、小難しい名前の必殺技を叫ぶシーンなども無い。淡々と作品の世界観に則りながら行動する主人公たちの冒険を負えば自然と笑えてくる。ボケとツッコミもスッキリ纏まっている。長文のボケに対する長文のツッコミなど、銀魂ギャグマンガ日和に影響されたような暑苦しいシーンは無い。(ちなみにAchelouは銀魂ギャグマンガ日和は好きです)落ち着いて読めるので、そういうのが苦手な人に超オススメ。リラックスしてクスリとして欲しい。

終わりに

 しばらく漫画を買っていなかったが、こういうテンションの漫画を求めていたのかもしれない。ファンタジーや冒険ものは好きな方だと思っているのだが、如何せん少年漫画だと登場人物や組織の名前が綺羅びやかすぎたり、人物の行動に納得がいかなかったり、怒涛の展開過ぎたりして読むのに疲れることが多い。ダンジョン飯は丁度いい、まさしく中間をいく作品だ。絵も綺麗で見やすく、それでいてアクションシーンなどはダイナミックに描かれている。これからも九井諒子さんに注目したい。

 

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