点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

ライト書評―『社会科学入門』『密教』『伝える力』について

こんばんは。Achelouです。

昨日、こんな記事を書きました。

 

achelou.hatenablog.com

 

読書ハウツー本の中には「アウトプットが必要だ!」と書いているものもあれば、「本の内容を吟味しないうちは、批判や書評などしないほうが良い!」と書いてあるものなど、読んだ本をその後どうするかについて書かれているものが数多くあります。皆さんはどちらが良いと思いますか?

Achelou個人としては、どちらでも良いと思います。どちらの意見も的を射ているんじゃないかな。アウトプット推進派は、アウトプットを何のためにやるのか?というところが重要じゃないかなと思います。「勉強のため」「読んだ本の内容を覚えておくため」という理由では長続きしないと思います。逆に「よく知りもしないで書評するな派」は確かに、誤解とウソまみれの文章を発信してしまうのは問題ありですが、文章力を我流で鍛えるのに適していると言われている「要約する力」を求められる書評のハードルを、読書のハードルと共に上げ過ぎるのもどうかと思います。

したい人は自分の責任ですれば宜しいってことには、ならないのでしょうかね……。

僕は皆さんの本に対する意見とか感想をバンバン読んでみたいと思います。

『「ライト書評」はじめます』の記事にも書かせて頂きましたが、Achelouは読書を娯楽と捉えることにしております。上の記事では「ライト書評」の目的は、「書評訓練」「読書ログ」という、自己研鑚的な目的を格好良く書いておりましたが、実のところ、こちらも娯楽としてやっていこうとしているのです。

でもしっちゃかめっちゃかな文章を書いて、人が寄り付かないということは避けたい……。読書友達は欲しいので、しっかりと他人にわかり易い文章を心がけつつ、ゆるりと本について語っていこうと思っております。よろしくお願いします。

『社会科学入門 知的武装のすすめ』―世の中の流れを読み解くために何をどう学ぶか

社会科学入門―知的武装のすすめ (中公新書 (760))

社会科学入門―知的武装のすすめ (中公新書 (760))

 

多くの人にとって、「政治・経済」や「公民」という科目は、退屈な授業だという認識があったかと思います。でも、いざ社会に出て、選挙権をもらってみると、政治的な知識というものを持っていなければ戸惑いますし、社会がどのような思想背景をもとに成り立っているのかを知らなければ、世の中で起こっていることを、一から自分で考えるという骨の折れることをしなければなりません。それが楽しければ良いのですが、多くの人は「そんな七面倒臭いこと、やってられるかい!」となるでしょう。

 社会科学というと、なんだか七面倒なことに聞える。しかし、本書で扱う社会科学とは、基本的には、社会現象をどのように捉えるか、どのように解釈するか、というだけのことである。

今まで、社会科学とは縁遠かった人からすると勇気が出てくる一文ですよね。おおまかに内容を説明すると、「社会現象と向き合うのに必要な勉強と精神の方法を解説してくれている本」です。しかし、全く政治・経済を知らない人は、本書を読んでもピンと来ないと思います。

何をどのように勉強していけばよいか、ということについて言及されていますが、政治哲学の参考書には、プラトンの『国家』、アリストテレスの『ニコスマス倫理学』、ホッブズの『リヴァイアサン』などを挙げていて、これを参考にしようったって、初学者には難解も難解。もし興味を持たれた方は、他の政治哲学入門系の本と一緒に読んでみると、何故こうした古典の知識が必要なのかについても腑に落ちるかと思います。

密教』―新宗教との混合が解ける本

 

密教 (岩波新書)

密教 (岩波新書)

 

『教養としての宗教入門』を読んでから、ある種の宗教フェア状態で、前に買ってあったのを、今になって読み返しました。密教と聞くと地下鉄サリン事件など、多くのテロ事件を起こした「オウム真理教」の存在思い起こしてしまう人もいるかと思います。

しかし、「宗教=怖いもの」という印象を持ったままでは、色々と損です。というか、それこそ危険です。中東で問題になっているイスラム過激派の中には、原理主義を名乗る組織もありますが、その多くは、彼ら独特のコーランの解釈により、テロ行為をジハード(聖戦)と解釈して正当化しているものです。こうした知識を知っておかなくては、イスラム教全体を漠然と「怖いもの」というレッテルを貼り付けたまま、世の中の出来事を見ていくことになります。

宗教を正しく理解しておくと、宗教の教えを都合よく利用する犯罪組織や詐欺的な新宗教に対して敏感になれますし、正しい教えを守っている宗教家の人々に対して、差別的に見てしまうことを防ぎます。

密教思想については仏教の成り立ちに言及しつつ、歴史的な背景から解説してくれます。ただ、仏教独特の言葉に慣れないうちは、途中で何を書いてるかわからなくなってきてしまうかもしれません。特に大乗仏教から色濃く影響を受けている宗教なので、真言宗やインドの宗教に詳しい人はスッと入ってくる内容かと思われます。文章は易しめなので、仏教に関する知識が無くても、少なくとも「密教ってなんとなくこんな感じ……」というものはつかめると思います。僕もまだ読んでいてスッキリしないところがあるので、再読候補です。

『伝える力』―池上彰流コミュニケーション術

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

 

おーっと!ハウツー本脱却中とか言っておきながら、まさかのハウツー本。でもこれは面白かったです。

やっぱりブログとかをしっかりやりたいぞ!という人って、「どうやったら伝わりやすいのか」ということに感心を持っている人って沢山いると思います。池上彰さんはNHKの番組『こどもニュース』の解説役であるお父さんポジションを長年勤められた方です。子どもに「日本銀行とは何か?」を説明するときに、「日本の中央銀行で、銀行券の発券や、民間の銀行・政府に対する貸付、国庫金の収支義務を行う銀行です。」なんて言っても伝わらない訳です。

難しい言葉で理解している事柄ってあると思います。それこそ、哲学の学説や宗教の教え、社会科学の用語などは、「それってどういうこと?」という質問に対して説明しようとすると、難しい言葉のまま相手に説明しようとしてしまうことがあったりしますよね。でもそれって、本当にそのことについて理解しているの?という疑問があります。

「伝える」ために大事なこと。
それはまず自分自身がしっかり理解することです。自分がわかっていないと、相手に伝わるはずがないからです。

この一文、非常にガツンときます。そりゃそうなんだよね~としかいえません。冒頭で「書評は理解していないのにやるもんじゃない」という意見に、強力な見方がついてしまった心地がしますが、書評やる上では、分かる範囲だけ伝えてるつもりですのでご安心ください。

コミュニケーションというのは相手に意見が伝わらないと意味がありません。伝わらないのもまた良し……という思慮深い方々はさておいて、ニュース解説屋さんとして一躍時の人となった池上彰さんの方法論を学んでおくのは、損しないと思います。

以上、『ライト書評―『密教』『社会科学入門』『伝える力』について』でした。

 

achelou.hatenablog.com

achelou.hatenablog.com