点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

痩せるのが難しい理由を知っても、痩せることは無い

衝動的な過食により、とうとう体重が100Kgを超えた。しかし過食をやめられそうになく、医者に相談するつもりだ。もともと太っていたので、さらに食欲に拍車がかかってしまった状態だ。間食と高カロリーな食事を我慢しようとしても、結局無意識に食べてしまう。で、気がつけば次の日は極端に食べない。食欲が沸かない。また次の日は腹が空く。ということで、1日過食、次の日食べない、次の日また過食という負の連鎖が始まった。

薬の影響なのかどうなのか、よくわからない。どうしてこうなってしまったのだろう、と思うと惨めになるから、あまり考えず、次の一手をめげずに探る。

ちょっとそれに関係しそうな本を読んでみることにした。

デイヴィット・J・リンデンの『快感回路(原題 The Compass Of Pleasure)』である。

ダイエットは身体の仕組みに抵抗する営みであるので、ダイエット産業が提示する難易度よりも、実際には、はるかに困難な行為であると説明される。

あのデブはどうして食べる量を減らして運動をしないんだろう?意思が弱いだけじゃないのか?

 そんなことはない。人間に、すでに見たような動的平衡に基づいた食欲コントロール回路が備わっている以上、体重を大幅に減らしてそれを維持するというのはきわめて困難なことなのだ。体重が落ちて脂肪が減り、レプチン*1・レベルが落ちる。すると生化学的な連鎖反応が起こり、代謝率を抑えて無意識の食欲を強める信号が発信される。失われる体重が大きければ大きいほど食欲は強くなり、エネルギー消費は抑えられる。(『快感回路』単行本版P.90)

わずかな減量を一定期間行うことは意識的に可能であったとしても、急激に脂肪を落とすようなダイエットの場合は、熱消費量が抑えられ食欲が増大する。これは長年このように言われてきたことであるので、急激に痩せてリバウンドしにくいダイエットなんてものが存在しない、ということを確信するトドメになってくれた。

また、肥満には遺伝的要因があるとされる。

オレゴン大学では、太った若い女性たちと痩せた若い女性たちに、ミルクセーキをストローで飲んでもらいつつ脳スキャンをする研究がされた。

そこで分かったのは、太った若い女性たちのほうが、ミルクセーキ一口で分泌されるドーパミンを受け止める背側線条体という部位の活性化が優位に小さかったのだという。

また、この女性たちには遺伝子検査が行われており、TaqIAという遺伝子多型部位を調べられた。ここにA1という対立遺伝子が存在すると、快感を司る脳の部位におけるD2ドーパミン受容体の密度が減ることが分かっている。検査の結果、太った若い女性の中にA1を持った人ほど、背側線条体の活性化が小さく、追跡調査でもA1を持たない被験者に比べて、体重の増加が優位に大きかったという。

この実験の実施者であるエリック・スタイスは次のように指摘している。

「被験者の脳の反応を見ていると、肥満の人はミルクセーキを飲む前、飲もうとしているときに、快感回路が比較的大きく活性化する。つまり、皮肉なことに、彼らは大きな報酬を望んでいながら、実際には小さな報酬しか得られないようなのだ。」(『快感回路』単行本版P.97)

僕がこの遺伝子を持っているのかは不明だが、思い当たることはある。あんなに食べたかったお菓子や高カロリーな食事なのに、食べてみたら意外に、あるいは全く美味しいと感じない。うつ病になってからは特にそうだ。

『快感回路』では、このような身体的な構造によるダイエットの難しさや、遺伝子的な要因が肥満に関係していることなどが指摘されているが、大多数の人間にとって、ダイエットが難しい一番の要因は、社会的要因であると説明されている。

アメリカの成人の平均体重は、1960年から現在までの間に12キロほど増えている。これが遺伝的な変化でないことは明らかだ。主な原因は、外食産業が協力して、人々の快感回路を最大限に活性化する飲食物を生産し、大量に提供する努力を続けてきたことにある。その結果、アメリカ人の食べすぎが促進された。(中略)

人間もラットも、脂肪と糖が豊富な高カロリー食を食べると、VTAの標的領域にドーパミンが大量に放出される。(P.98)

90%は遺伝子要因です!とか言い切られなくてよかった。遺伝子の仕組みや進化の歴史に抗うなんて、僕にはできそうもなく、ダイエットに成功している人たちを鋼の意志の持ち主として崇めながら、脂肪の塊となって死ぬだけだっただろう。

社会的要因のほうが大きのであれば、品目を変えるという手段を使ったほうが良かろう。現在の食生活は、お金もないので、ほとんどがインスタント食品だ。しかしこれは、金が無いなりに自炊をするという努力を怠った結果である。

早急に献立を作ろう。安くて、高タンパク低カロリー、バランス良く糖質も摂取できて、べらぼうに美味い。……考えるのが面倒くさくなってきた。

 

結局は己を律する必要が出てくる。

こんなに難しいことに挑戦するのが、今の弱った心に対して効果があるのか無いのか。難しいところだが、この上さらに糖尿なんかになったら本格的に抜け出せないアリジゴクに到達しそうなので、今度ばかりは……やらなきゃな……。

生きるって大変だよ。みんなお疲れ様。

*1:脂肪細胞から作られるホルモン。脳内で食欲を抑え、熱消費量を増やして体重を一定にする働きがある。