点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

ただ観るだけで「いいな」と思うアニメ──『スーパーカブ』(5話までのネタバレあり)

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僕はノーライセンスマンだ。この世に様々ある免許という免許を何一つ持っていない。運転免許はその代表格だ。ありがたい事に東京に生まれ、生活圏を東京以外に拡大せずとも生き延びることを選べる精神性を獲得したことにより、徒歩と電車で事足りる生活を送っている。旅行にもそんなに出かけない。

そんな僕でも「原付きの免許くらいは取ろうかな」と思わせたのが今季の覇権アニメ『スーパーカブ』である。え?覇権じゃない?そう思うならそれで良い。僕は今季のアニメの多くをざっと観た結果『スーパーカブ』だけ残った。原作はトネ・コーケンの同名ライトノベルで、まだ読んでいない。読みたい。

父を早くに亡くし、母には高校入学と同時に書き置きだけ残され、天涯孤独となった小熊という高校生の少女が主人公。友人と呼べる人間もいない、極度に地味な学生生活を送っていた小熊だが、通学用にスーパーカブ(ホンダが製造販売しているオートバイシリーズ)を購入したことから、生活に様々な変化が起きる……というあらすじ。

一番の大きな変化は、才色兼備の同級生の礼子との出会いである。5話まで視聴したところ、礼子はカブ以外に取り立てて興味が無い。逆にカブにはマニア顔負けの知識と熱量を持っており、オタク特有の痛さがにじみ出ていて、なんとなく親近感がわく。アニメでは第2話でカブを購入した小熊に接近し、昼休みに昼食を共にする仲になる。

冒頭で申し上げたとおり、僕は免許を持っていない。ゆえにカブの知識はほぼゼロだ。ローカル深夜番組『水曜どうでしょう』で、大泉さん鈴井さんが苦行をするための道具としての認識しか無かったのだが、礼子によってカブ知識やパーツの知識が勝手に入ってくるようになったので、このキャラクターの存在はありがたい。

バイクに対する知識も興味も無い人間が観て楽しいものなのか、という疑問を持つ人がいるだろうが、日常系アニメが苦手だという人間以外は楽しめるだろう。実際僕も、終わってしまった『ゆるキャン△』2期や、『のんのんびより』3期の代わりに観ている節もあるが、代わりとするには失礼なくらい、いいアニメだと現段階では思っている。

背景描写や音響にめちゃくちゃこだわりを感じるので、アニメ技法マニアにもウケが良いと思うのだがどうだろうか。ストーリーも大した事故は起きない。ここまでで一番大きかった事故は、5話で礼子が富士山をカブで乗るという野望を抱いて失敗してしまうというものだ。あれ、よく死ななかったな。

基本的には、主人公小熊の成長物語として描かれているので、物語のスケールは小さい。頭を使うタイプの話ではないので気軽に見ることができるし、友人の作り方を学べる。

友人関係が出来上がるのに一番重要なのは、どれだけ「共通の時間を過ごしたか」であるらしいが、共通の時間を過ごすための共通の話題を持っていなければ、きかっけすら持てずに終了するのだ。

自分はコミュ障だから……と自らのコミュ力に限界を感じてしまっている人は、ミーハーでも何でも良いので、流行に乗ってみたり、共通の趣味をもつ人間との交流を画策すべきである。小熊のように、少しずつ世界が広がるかもしれない。

 

あー、いいなスーパーカブ。だが、残念ながら僕にはバイクに乗れない理由がある。

僕は大学時代、ゼミの先生に飲み会で手相を見てもらったことがある。

「占いでは悪い結果を言わないというマナーがあるそうですが、遠慮なく言ってください」

そうお願いしてから、両手を差し出してみると、恋愛は「この人だ」と思った人でないと付き合えない、浪費には注意、詐欺には人一倍注意云々、様々なご忠告を頂いた。

「最後にひとつだけ。危険なことは絶対にしてはいけませんよ」
「それはどれくらいのレベルの話ですか。バンジージャンプをしないとかジェットコースターに乗らないとかならご安心を。苦手ですから」

しばらく先生は考えた。そしてこう言った。

「うーん、そうねぇ。バイクには乗っちゃダメ」

というわけで、僕は今後、想像上でバイクに乗ることにする。礼子が達成できなかった富士山登頂なんて目じゃないのだ。

<関連書籍>

原作小説とコミックエースで連載されているコミカライズ版がある。表紙の雰囲気が似すぎている。購入の際は注意されたし。