点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

『金融がやっていること』/永野良介

 もう選書にこだわってたらいつまで経っても本について書けないから、この間の選書基準一旦なしにしてもいいよね。誰も読んでないし。ということでかなりライトな選書で書評を一発。

金融がやっていること (ちくまプリマー新書)

金融がやっていること (ちくまプリマー新書)

 

 世の中には「○○入門」という本で溢れかえっているが、中には書いてあることが理解できず、門前払いを食らわされる書籍もある。「金融」について理解しようとして挫折した人はどれほどいるか。

 我々は形だけでも資本主義のシステムを採用した社会に生きている。だから自分が金融を直接扱う仕事に就いていなくても、『金融入門』という書籍があったならば、一回くらいは読んでみるかという気がしてくる。そして挫折する、という経験をした人って結構多いと思うんだけど、どうでしょうか。

 僕はある。理解できない数式が出てきた段階で本を閉じた。金融というのは理論のお勉強をする場合、偏微分方程式とか出てくる。これを理解するのは、数学が嫌いだから文系大学を選んだのだという「模範的クソ文系野郎」の僕では無理である。ということで、門前払いを食らった。

 僕の場合はなんとなく門前払いされるだろうなという予測もついていたので、お硬いガチガチの金融入門書からはさっさと引き返した。食らいつく読書も面白いが、僕はクソ読書提唱者なので、理解できないものに時間を使わずに、他の本を読んで楽しいな~と思うことの方が、読書体験として優先されるべきであると思う。.

 能動的門前払い、つまり門前払われされた後は、門前に広がる「金融よみもの」の領域にある書籍に焦点を当てた。よさげな本が無いかなあと探していたところ、本書『金融がやっていること』を見つけた。ブックオフで108円の値札が付けられてしまっていたがぜひとも新刊で書い直させて頂きたい内容であった。

 本書は金融入門に門前払いを食らった人や、金融について全く分からんという人にとっての「門前書」としてうってつけだ。基礎中の基礎を平易な言葉で書いているので、金融についてほとんど無知であった僕でも、金融機関や投資家がやっていることの大枠を掴むことができた。この本を暗誦すれば、小中学生にでも理解できるほど明瞭に、金とはどういうものなのか、株式とは何か、そして金融は何をするということなのか、ということを説明できるようになる。子どもを金持ちにしたいなら、本棚に忍ばせておいたほうがよろしい一冊かもしれない。

 どれくらい分かりやすいかというと、高校で政治・経済を選択せず、中学公民の知識もあやふやになっている人であったとしても、全く問題ない。1からお金、銀行、株式やら投資やらについての知識をざっくりとおさらいできる。

 恥ずかしながら僕は金についての知識が乏しく、高校レベルの政治経済の中でも経済の部分は、かなりあやふやだ。特に株式や投資についての知識なんてほとんど忘れたし、日常生活で投資なんぞしないもんだから中学公民の知識でさえぶっ飛んでいたようなレベルだった。そんなヨチヨチ歩きの僕でも、投資家やそれを取り持つ金融が何をやっているのかということを、取り違えずに理解できるようになったと思う。.

 ところで金融に詳しい人でも「金融とは何か?」をわかりやすく説明できる人はいるだろうか。「金融とは金の流れである」という説明では正直しっくり来ない。この本ではこのように説明されている。

金融の役割を煎じて詰めていくと、「すぐに使わないおカネを持っている人から、おカネを使う人に、おカネを回すこと」です。金融の仕事に携わる上で、あるいは、金融に興味があってどんな仕事かを眺める上で、この視点を持ち続けることが重要です。(p.178)

 こんくらいのレベルで書かれている本なので、もし、金融に興味があるけれど、正直知識が全く無いという不安な人や、小難しい財テク本や本格本寸法の金融入門書で挫折した人は、こういう本に立ち返って見ると、学習意欲が湧いてくのではないかなと思ったので紹介してみた。

 今まで、ちくまプリマー新書とか岩波ジュニア新書は本当にお世話になってるから、そこらあたりの書評も増えると思う。