点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

経過報告~「人生遊び得点票」を作ったという話~

 投薬されはじめてもう3ヶ月目だが、だんだん以前の精神状態に戻ってきたような気がする。しかしうつ病というのは脳機能の低下が原因と考えられるため、自覚的な気分の上下や、他者判断による気分の浮き沈みをあてにして、回復したと思いこんではならない、ということを医者から言われた。うつ病は、骨折と同じように、リハビリが必要であるという。

 骨折した足をいきなり動かそうとすると悪化するように、うつ病も脳への負荷や、ストレスになるような責任ある行為をいきなり引き受けようとすると、せっかく治っていた気分も落ち込み気味にまた戻ってしまうという。つくづく人間というのは、急激な変化に耐えられないシステムによって動いているのだと実感した。

 ストレスにはウォーキングがよろしいという情報を書籍で確認したことを思い出して、地元では有名な散歩コースを巡ってきた。高低差もあり、身体に対してある程度負荷のかかるようなコースなので、ちょうどよいかもしれないと思ったが、帰宅したときにはヘトヘトだったし、なんなら少し頭痛がした。風呂に入ったせいで、血行が良くなったというのもあるのだろうけど。急に60分コースでちょいきつめな早歩きをしたのもダメだったかもしれない。明日から数日間は、普通の散歩を意識しながら、のんびり歩こうと思う。

  最近、図書館でヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』をパラ見した。うーん、人間の諸活動の本質は遊びであり、文化の根底・発展には遊戯的要素が不可欠であったという視点は面白い。ものは試しとして自分はどのくらいホモ・ルーデンスであるのか試してみた。すると確かに、ありとあらゆることに「遊び」を見出すことができる。

 試しに今、僕の目の前にあるテレビのリモコンと、それ以外何も乗っていないテーブルで想像してみよう。

 「僕が今いる場所から何秒でテレビを点けることができるか」「最適なリモコンの位置はどこか」「リモコンをテーブルの端から飛ばしてどれだけギリギリのところでストップさせるか」「リモコンのすべてのボタンを何秒で押せるか」「超能力でリモコンは動くか」「何のボタンが一番女子ウケが良いか」「どのボタンが好きか」「テーブルからどれだけはみ出すとリモコンは落ちるか」「このリモコンはどこから来てどこへ行くのか」……などキリがない。

 物理世界での遊びから、妄想世界での遊びまで様々ある。リモコンひとつとっても、10個弱の遊びを考えられる。この程度のくだらない遊びであれば、僕だけではなく、誰にでも想像ができるのだ。

 遊びというのは、なんでもないものに対して仮想的なルールを設けることによって作られる。複数人を巻き込むものになれば、その仮想的なものにコミットメントすることによって作られる。なれば、仕事も、経済も、場合によっては戦争もみな、もともとは「遊び」の発展形であったとホイジンガは言う。本書の凄いところはここ以外にも様々あるので、丁度学術文庫で出てるし、『文庫-LOG』のほうで紹介すると思う。

 ということで、よりホモ・ルーデンスになるべく、「うつ」も遊びにしてしまおうと考えた。第して「うつ回復RTA」。

 既に僕は投薬治療を受けているが、ここに認知行動療法的発想を加え、早期回復を試みてみることにした。基本姿勢は「休むことを遊ぶ」である。どれだけ効率的に休むことができるか、どれだけ治療によろしくない精神的負荷を取り除くことができるか、ということを意識しながら、精神的な環境を整えようという魂胆である。

 最近僕がよく感じる自己嫌悪は「今日一日何もしなかった」というものである。これをとりあえず打破する必要があるように感じる。そこで、「人生遊び得点表」を作った。

 これは、「日常」「趣味学習」「タスク」に行動を分け、クリアしたものにチェックをする。日常は1pt、趣味学習は2pt、タスクは3ptである。

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実際の得点票。Google Keep使用。他にもいいのがあったら教えて~。

 「日常」には、布団から出る、ひげ剃り、風呂、薬を飲む、歯を磨く、洗濯物をたたむなど、日常生活上必要なものを配置。「趣味学習」には、読書、音楽制作、映画鑑賞、ブログ執筆などを配置。そして「タスク」には、「他人からの依頼のために動く」という抽象的な項目のみを配置した。約束事というのは、精神を病む前から相当苦手だったので、これができたら歯磨きやらひげ剃りやらの3倍のポイントあげちゃうんだから!ということで設けている。

 どうあがいても、「布団から出る」ことは、便通の都合上獲得できるポイントであるから、「何もしない1日」なんぞ、存在しないということを、数値と記録で確認することができる。ちなみに、今日は日常4pt、趣味学習4ptで、今の所8ptである。8pt「も」1日行動するのは凄いことである(と思うようにする)ので、もし「何もできなかった症候群」を発症している方々は、参考にしてみて欲しい。

 もちろん、このような数値化というのは相対化にほかならず、「今日は昨日よりもポイントが少なかった……」という精神状態になってしまう可能性も否定はできない。だから万人にオススメはできないから、自己責任でやってほしい。ただ、我々の諸活動が遊びであると実感できた人間からすると、この療養中にどれだけポイントを獲得するかという「遊び」になっていく。脳にかける負荷の指標にもなって一石二鳥か!?ということで、しばらく実践していこうと思います。