点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

ググるでもDuckるでもなく、Amazonることの有効性──烏賀陽弘道『フェイクニュースの見分け方』を読んで

社会問題について知りたいとき、アマゾン検索で書籍を検索することにしたのは、大学に入ってからだった。それは今でも続いている。他人の言葉に影響されやすい僕は、自分なりにリテラシー向上と情報検索の方法を改めなければ、粗雑な情報を掴まされて、いつ自分が素っ頓狂な情報を掴んで声高におかしなことを主張し、「陰謀論者だ!」というレッテルを貼られる事態になってもおかしくないと感じていた。それ故、信頼性の高い情報を入手するのに手っ取り早いということで、アマゾンの書籍検索を利用しだした。

ネットの情報は、「誰でも発信・編集が可能」であるが故に、「誰が書いたのか分からない」「出所不明の情報が書いてある可能性がある」「不正確さをチェックする機能が無い」のでWikipediaなどは自分の主張の論拠やデータとして使うことができない。つまり当たるなら書籍や新聞記事、官公庁が出している公的資料、研究論文などが妥当である。この内、信頼性と入手しやすさのバランスがいいのが書籍だ。

書籍は誰がどのような主張をし、その主張がどのような経緯で導き出されたのかが、新聞・テレビ・ラジオ・ネットと比べるとわかりやすい。「この情報源は嘘を言っているのか、いないのか」「事実はここまでで、ここからが著者独自の主張、憶測」などの判断がつきやすい。そのため、何かしらの社会問題や自分の知りたいことは、まず最初にGoogle検索するのではなく、アマゾンで書籍を調べ、オンラインの図書館データベースで検索し、借りて読むというのが癖になった。

奇しくも同様の主張をする書籍と巡り合った。烏賀陽弘道著『フェイクニュースの見分け方』である。

著者の烏賀陽氏は1986年朝日新聞社に入社し、雑誌AERA記者、編集者を経験。その後フリーのジャーナリストとして独立。ポップカルチャー、安全保障、3.11以降は福島第一原発事故など、多岐にわたるテーマで多くの書籍がある。本書は2017年、陰謀論フェイクニュースに沸き立ち始めた頃に書かれた警告の書である。

フェイクニュースの見分け方(新潮新書)

 「アマゾン」は書籍と著者のデータベースとして非常によくできている。福島第一原発事故後、私はアマゾンに「原発」「事故」「避難」などのキーワードを入れて文献を探した。

 「参考書」探しにとどまらない。そうした文献から、事故前から原発事故と住民避難、除染などについて警告していた専門家を何人か発見した。出版社に電話して(奥付に必ず出版社の住所や電話番号が記載されている)筆者に連絡を取りたい旨を伝えると、取り次いでくれた。そして筆者に面談した。私は3・11以前は原発やエネルギー問題にニュースソースがほとんどいなかったが、そうやって取材先を開拓した。

 アマゾンの長所は、現在書店に流通している本も、絶版になって古書マーケットでしか流通していない本も同時に検索できることである。

著者によれば、記者だろうがCIA分析官だろうが、公開情報の分析を重要視すると言う。95%の公開情報を丹念に読み込んで積み上げ、5%の非公開情報が入手されたときの分析や価値判断に利用する。良質な情報とは、公開情報を情報源にした分析と、それを入り口に人間に対して聞き出した情報が有機的に組み合わさっている必要がある。より事実に近い情報というのは、そのようにできていると主張する。

著者はAmazonの他にも国会図書館や東京都立図書館のデータベースなども利用しているという。参考にしない手は無いのではなかろうか。これと新聞記事を横断的に検索できる「Gサーチ」などを活用すれば、大概の公開情報を参照できるようになる。僕はアマゾンしか使ってこなかったため、Gサーチについては著者の書籍を読むまで存在を長らく知らなかった。

玉石混淆を極める現代のネット空間において少しでも有益な情報を手に入れ、社会の動向を分析するには、ジャーナリストが利用している手段を参考にしてみるのが良い。地道な公開情報のインプットと分析、それがポスト・トゥルースの時代で右往左往する我々にとっての、何より処方箋である。

本書にはこの記事で書ききれなかった「フェイクニュースの見分け方」が掲載されている。このブログで以前紹介した『フェイクニュースを科学する』では具体的に示されなかった、実用可能なテクニックだ。一人ひとりがジャーナリストと同じようなメディア・リテラシーが要求されるようになっていきそうな時代なので、読んでおいて損はない一冊。