ライフハックなんていらない
ライフハック記事ほど吐き気を催すものはありません。
何故かと言うと、「人生をより効率良く生きよう」という思想は、「人間が効率よく生きる能力がある」という前提にたっているからです。
そうした能力はあるのかもしれませんが、生活レベルで効率化を求めることって、そんな必要なことなんですかね。
ハーバード・サイモンの系譜を受け継いだ心理学者ダニエル・カーネマンは、人間は「限定合理的な生物である」という人間観を前提に、経済活動上でもその習性は損なわれないことを自身の研究で示し、ノーベル経済学書を受賞しました。
「経済って、人間の心理がめっちゃ影響するんやで」という人がノーベル経済学賞を取るということは、それまでの経済学にとってピンチです。経済学は「合理的経済人」という、いついかなるときでも、合理的に判断できるという、ありもしない人間像を想定して作られた学問だからです。
経済学者でもない心理学者が、ノーベル経済学賞を受賞してしまった!というのは、
【悲報】経済学終了のお知らせ!的な感じで話題になりました。
- 作者: ダニエルカーネマン,村井章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/12/28
- メディア: Kindle版
- 購入: 2人 クリック: 34回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
今までは経済学が正しく、それに従えない人間が間違っているのだという考え方が主流だったのですが、カーネマンの研究で、そもそも無理である可能性が濃厚になりました。じゃあ、人間の認知や心理に即した経済理論を作っていかなければいけないね、という方向転換がなされ、経済学は行動経済学という、心理学に生まれ変わってしまいました。
この視点はライフハック不要論にも使うことができます。
カーネマンによると、人間は限定合理的な生物らしいのです。
人間は、合理的に考えることもできるし、合理的に考えられない状況もありますよ、ということです。
じゃあ、合理性を突き詰めても、それを使えなければ無用の長物ではありませんか。しかも、人間の脳の処理能力には限界があります。すでに多くのものは、コンピュータには敵いません。
ということは、最初から合理性なんて求めることこそ、非効率的ではないでしょうか。さらに、合理的判断を適切に使える状況下においても、限界は人によるので、画一的な方法論で、効率化の限界を探ろうとしても、万人が同じ効果を得られるわけでも無いのです。
合理性を追い求め、精神面に以上をきたしてドロップアウト、生産性もクソもない人生を送る羽目になってしまう可能性だってあるのに、そうしたことも無視して、ライフハッキングに勤しむ人々を見ると、まるで自己啓発難民だった頃の自分を思い出して悲しくなってしまうのです。
ライフハックとはもともとIT業界における仕事術を指し、いかに効率よく仕事をこなすか?というテクニック的なものを指していたんだってさ。Wikipediaに書いてあったよ。
そういうテクニックが、いつの間にか仕事から生活の場に持ち込まれ、ライフハッカーなんてサイトも出来上がり、学者でもないジャーナリストが、「心理学では」「脳科学では」「最新の遺伝研究によると」「未来学者の予想では」「マインドフルネスの考え方では」なんて枕詞をつけては、チャランポランなことを言ってのけ、金を得ているのを見ると、なんだか羨ましくなってきます。
くっそー!僕だってできるぞ!
持ち前のライフハックを皆さんに伝授しちゃる!
今回は仕事について!ニートの僕が、あなたの仕事の悩みを解決しちゃいましょう!
まず、あなたの仕事がうまくいっていない理由は、以下の2つです!
- 好きじゃない
- 向いてない
コレ以外にありません!これは脳科学的にも正しいことが言われているんですって!
知らんけど!
もしどちらかに当てはまる、あるいはどちらとも当てはまる場合は、即刻やめてしまいましょう!なぜなら、合理的、効率的に考えてみると、好きでもなく向いても居ない仕事を辞職するのは、その企業・あなた個人の双方に、メリットなのです。
企業は、生産性の低いあなたを雇うことで、「お金の無駄」というリスクを背負います。あなたが辞めることによって、このリスクが減ります。
あなた個人は、生産性が低いと、「この赤字社員が!」という上司からプレッシャーや同僚からの冷ややかな目を向けられながら、長い時間働くことになります。しかも仕事が好きではありません。
すると、万病の元とされる「ストレス」というものが増加し、なんかこう、いろいろ起きます。
ストレスは、がん、脳卒中、心筋梗塞、大動脈瘤、脱毛症、胃腸炎、胃潰瘍、睡眠不足、免疫低下、メタボリックシンドローム、高血圧、低血圧、ニコチン依存症、アルコール依存症、ネット依存症、セックス依存症、ED、水虫、インキンタムシ、うつ病等精神疾患などを引き起こす、本当におそろしいものです。
そんなことを言っても、今すぐやめると金がなくなる!
というのなら、家族を頼るか、生活保護を受けましょう。元気が出るまでは、誰かを頼りましょう。親のスネがダメなら、誰のスネでもいい。誰も頼めないなら、国家のスネをかじるのです。
ネットで調べれば、受給の際のコツを教えてくれるサイトがゴロゴロでてきます。受給を支援してくれるNPOもあります。日本は金が無いということで、死ぬことができない国なのです。
いかがでしたか?(決まった……っ!)
今すぐ嫌な仕事に見切りをつけて、より自分がストレスを感じない職場に転職し、人生を取り戻しましょう!
いける。いけるで!
これは酷い!
う~~~~んグッドスメル漂わすライフハック記事ライターとして活躍する日は近いかもしれませんね!
冗談はここまでとして、マジな話、ライフハックよりも知るべきことがあります。
社会的弱者であれば日本の社会保障制度、中流階級なら他と差をつけるカッコいい趣味、上級国民なら高級外車の車種、デイトレーダーなら株価、政治家なら民衆の声、ライターなら一次情報、ホームレスならビッグイシュー受付窓口です。
これらの情報は公共図書館でいつでも調べることができます。
そうです。図書館の活用こそ、最大のライフハックなのです。
あなたの人生が好転することを信じて(虚ろな目)