点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

『明日クビになっても大丈夫!』を読んでも全然大丈夫と思えなかった。けど本は面白かった。

明日クビになっても大丈夫! (幻冬舎単行本)
 

書けばバズる男ヨッピー氏によるビジネス本である。この本を読んで、明日クビになっても大丈夫!と思える人は、著者と同じ能力がある人間だ。

つまり、1.仕事を一定の水準でこなせる能力があり、2.自発的に仕事をアップデートできる人である。これは僕からすると、相当に有能な人である。

「俺はこんなにいい加減!」という根拠が述べられていくが、その謙虚な姿勢が逆に苦しく感じる。

著者は大学卒業後、大手企業に就職をすることになる。そこで社風が合わず、「転勤の辞令が下ったら辞めてしまおう」と決意し、実際7年勤めて退社することになる。しかし、同じ会社を7年勤め上げるというその能力は、自己効力感の低い無能ズにとっては、天晴モノである。

サラリーマン時代の仕事に対する熱量について、「8割くらいの力を出しておけば良い」ということをサラっと書いているが、それはその気になれば、与えられた仕事の8割の成果を出せるという、仕事ができる人間の思考である。

「明日クビになるかもしれない……」と考えている自己評価の低い人間は、大抵、「全力で事にあたってるのに成果が出ない」という課題でもがき、苦しんでいるのだ。読み進めていくうちに、不安になってくる。これが社会人における、自分のことをいい加減と評価する人間の思考回路ならば、自分はどれほど無能であることか……などと思うわけだ。

僕は前職(ケータイキャリアショップ)で、全力を出してもノルマの5割以下の成績しか出せなかった。しかも、僕に対して求められるノルマというのは、他の社員に求められるノルマの2割であった。

つまり平均ノルマの1割以下の成果しか出せなかった人間だった(SDカードを売ることだけは得意で、ノルマは超えていたけれど)。いい加減な態度で成果がでないならば、仕事に対する態度を改めれば良い。しかし先輩のアドバイスを素直に仕事に取り入れ、都度改良し、実行に移してもダメだった。今思えばそれは僕の思い込みで、実際には実行できていなかった可能性もある。

それでも!!!こちとら一生懸命だったモン!!!!という主張は、数字の前には無力である。営業職が向いていなかったと言われればそれまでだが、働いていた時は結構辛かった。

書いてある内容は、いわゆるビジネス書のお決まりの、「好きな仕事を持て」とか、「やりたくないことはやるな」とか、「ブルーオーシャン戦略を取れ」というアレだ。僕は人に影響されやすい性格なので、ビジネス書からしばらく遠ざかっていた。そのため、こうした主張は素直に受け入れられない性質なのだが、うっかり最後まで読んでしまった。さすがオモコロで、笑い(FanもInterestingも)を大事にしてきた著者である。文章が面白い。

肝要な箇所ではおちゃらけず、必要な情報はしっかりと書くが、硬い内容になりすぎない。これくらいの温度感で、面白い文章を書いてみたいもんだよ。

この本で学べたことは、1.有能な人間と自己評価はあまり関係が無いこと、2.仕事の質のアップデートができる人間でなければ、本業以外で稼ぎ口を見つけることは難しいという、まあ当たり前のことだったわけだけど。

ビジネス書というのはそういう、身も蓋もないことを教えてくれる本の方が、下手にドリームを売る本よりも良心的であるので、これは個人的に良書かと思われます。Kindle unlimitedで配信中(2020/06/27現在)。