点の記録

点を線で結べない男の雑記帳

先読み不安と自己批判を一人ディベートで矯正する

 不安は幻である。しかし、僕の脳みそは、不安をまるで現実で起こったかのように想像してしまう。過去やってしまったことをヒントに、まだ起きていない出来事について、どんどん想像を膨らませてしまうクセがある。こういう不安を、「先読み不安」というらしい。思考バイアスの一種である。

 もうひとつ、自分としては克服したい思考のクセがある。それは「自己批判」と呼ばれる。自分の評価を過少に見積もり、他人の評価については過大に見る。自分ができたことに目を向けず、他人の成果を凄いなぁと思うことで、自分はまだまだダメなやつだと思い込んでしまう。自己評価が下がると、自分は無力であることを学習する。セリグマンの言う「学習性無力感」とは、ざっくり言えばこのことである。

 精神を病みたければ、先読み不安と自己批判を身につければ良いと思われるほど、この2つは思考の悪癖として有名である。典型的な真面目くんタイプの思考バイアスらしく、その手の書籍にはこれらの対処法について詳しく書かれている。

 代表的な思考バイアスの治療法として挙げられるのは、「事実を見よ」ということである。元も子もないが、バカにできない。

 自分が下した判断や予測は正しいか?と検証する。「自分はダメだな」と思った場合は、「本当にダメなのか」ということについて考える。この時、自分の思っていることの逆の状態を考えるようにすると、バランスが取れる。試してみよう。

 「うつ病になったのは自己責任だ。」と僕が常日頃、つい思ってしまうことを使って、逆転させてみることにする。

 その前に、なぜ自分はうつ病は自己責任だと思っているのか?ということについて少し分析してみる必要があるだろう。これについては、ここでも実際に僕が思っていたことで書かせてもらう。

 うつ病は日々の思考の癖を治さなかった結果であり、ネガティブに囚われない訓練を行えなかった結果である。ネガティブな情報を受け入れているのは自分である。自己評価というのは想像上のものであるから、想像で以って支配してもよいはずなのに、それができないのは、自分で自分の自己評価を下げるような思考を働かせている。ゆえにうつ病は自己責任である……という具合だ。

 ではこれをひっくり返す。うつ病は自己責任ではないとすれば、どんな要因があるだろうか。

 心理学の研究では、とっさの判断やパニック状態の情報処理については、親の遺伝の影響を受けている可能性が高いという研究結果がある。ということは、先天的な要因だったかもしれない。遺伝のせいかもしれないのだ。(もちろん、だからといって親のせいでもない。親も自分の子どもが、自分のどの遺伝子を引き継ぐのかは、コントロールできないからだ。)

 また、いじられキャラだった過去や、学校では自己責任、自立を促される教育を受けている過去や、脳内伝達物質の分泌の仕方がおかしくなっているかもしれないことなど、「自分の行動や思考ではどうすることもできない要因の影響」によって、うつ病になった可能性の一切を否定できるか?

 すべて自己責任にするのは、無理がないか?外部要因というのは、主観によってフィルタリングをすることができるとはいえ、価値観を刷り込む技術も存在している以上は、うつ病は100%自己責任であるとは言えないという視点を獲得できる。

 このような一人ディベートは、自分の認知がいかに偏っているかを判断する良いツールだ。ある程度冷静にならないとできないことだが、いずれは自然に一人ディベートができるようになって、思考のバランスを取れるようにしたいものだ。

 これはセルフコン・パッションの力を上昇させる。かしこぶって横文字を使ったが、これは「自分を許すこと」だ。

 自分に優しくなろう!自分自身を労ろう!と言われても、材料がなければ「ただ単に甘えているだけなのではないか」という自己批判が飛び出てしまう僕みたいな人がいる。しかし、自分の思い込みや思考のクセによって導き出された幻想を打破する材料は、一人ディベートで獲得したのだ。だから、根拠のない状態よりも、安心して自分を許すことがてきる。ついでに言うなら、「甘えることの是非」についても一人ディベートすると、さらに思い込みを打破できるきっかけになる。

 しばらくは、極端なネガティブに襲われたら、「本当にそうか?」と意識に上げる練習をしようと思う。オマケで文章力が上がったらいいなとか。

〈同じ苦しみを持つ人たちへの参考文献〉

セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる

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ディベート道場 ― 思考と対話の稽古

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思考情報処理のバイアス―思考心理学からのアプローチ (Shinzan books)

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